政治不信の要因に - 一票の格差は何を招く - ニュース交差点 - 日経ネットPLUS: "日経新聞朝刊(11月3日付)の「インタビュー領空侵犯」でエッセイストの玉村豊男氏が「一票の格差の是正は不要だ」と問題提起した。"「ナチズムや奴隷制度は善であった」という論法と同じ。読んでいて気持ちが悪くなった。都市住民の一票を軽視してもいいという主張は、自分の価値観にそぐわない都市住民は政治的に殺戮してもいいと主張することに等しいからだ。
要は、ニッポンは近代文明に毒されている、ニッポンのヒャクショウ化こそが望ましいので、農村に余分の政治力(一票格差)を与えている現状は正当化できるというもの。何でもかんでも既成の既得権を正当化するため、理屈にならない理屈を強弁する農業協同組合新聞の論調を読んでいるようだ。質が悪いのは、こういう詭弁を理屈抜きで「信じたい」集団がニッポンに存在すると言うこと。
彼については一度書いたことがある。再掲する:
『草刈る人』(玉村豊男)……日本農業の実態はこれでわかるおフランス留学帰りの東大仏文卒エッセイストの玉村豊男は、今や5000坪の田畑を所有するれっきとした地主。作男を使って悠々自適の生活だ。その農村生活をエッセイに書いてまた儲ける。
日本の農村と農業を知るにはとてもいい本。さすが仏文卒。日本農業の本質的なところをよく書いている。
玉村豊男は文化活動にいろいろ忙しい人なので、この長野県の農園には常駐はしていない。だから耕したり作業をするのに作男(ほとんどは若い女性らしいから作女か)を7〜8人、常勤で雇っているとのこと。それに加えて休みになると「俺も農作業をしてみたい」という知人がわんさかやってくるので、これらの「季節労働者」をただで使っている。かなりあくどいな。
5000坪の農地を持つことで「ようやく平均的な農家に成れた」とのこと。たかが1・6ヘクタールだろう。飛行機を使って種を蒔くのが常識となっている国際スタンダードから見れば、極度に生産性の低い零細農家そのもの。それで作男(作女)を7〜8人雇えるだけの収入があるというのは、どう考えてもおかしい。保護政策により日本の農産物価格が異常に高いので、こうした経営が成り立つのだ。考え込んでしまった。玉村豊男は「農業とは一人で完結する作業で達成感がある」というが、いかにピン工場の生産性が分業によって飛躍的に向上したかを書いたアダム・スミスの「国富論」を読み直すべきじゃないか。
それにしても「ただでもいいから農作業をしたい」という人たちがこんなに多いとは驚き。昨今のロハス・ブームに躍らされている人が多いということ。おかげで零細地主でも左うちわ。このままでは、日本は340万人の地主有閑趣味階級を抱えることになる。
要は、自分のメシのタネを強引に擁護したいだけの話。
4 件のコメント:
こんにちは。
すごいですね。一票の格差はついていた方が良いという人がいること自体信じがたかったので、私はNikkei Plusには登録していなかったのですが、登録して読んでしまいました。残念ながら、本文は読めないようですが、他のパネリストの方が全員常識的な意見でしたので安心しました。
私は政治とは税金の再配分のことだと思っていますので、格差が今の状態なのはとてもよくないと思っています。今の状態は言うなれば「300万円もらえるのも、1000万円もらえるのも同じ権利だ」と是認している状況だからです。
他の国では下院などでは確か、すべて1.2程度になっていると認識しました。上院では格差はあるようですが。
そう、思いこみの強い「エコロ」や「農本主義者」は「ナチ」と同じ。それを礼讃する風潮がNHKなどのメディアで広がっている。とてもキモチワルイです。
「一人一票」、これに勝る「公平」はない。それを否定する狂信者に日経新聞ですらスペースを与えている。世も末です。
はじめまして。
いつもブログを拝見させていただいています。
玉村氏の暴論は,目に余ります。
法律の授業でも習いますが,一票の価値が平等として扱われることは,法の下の平等原則からして当然です。そして法の下の平等とは,近代国家における憲法の根元的な原理の一つです。
それを何らかの政策的な配慮のために譲歩していいという発想自体,近代国家の理念と完全に相容れない暴論です。これは所得や身分の違いによって,一票の価値を同じに扱わなくてもいいというのと同じで,このようなことがまかり通れば,国会はフランスの三部会と同じになり,封建時代に逆行することになります。
玉村氏の議論は,いかに専門外の「領空侵犯」とはいえ,到底容認することのできない暴論です。
玉村氏の不見識にも呆れるばかりですが,散人さんもご指摘のように,このような暴論を掲載してしまう日経新聞の見識を疑います。
そうですね。まったくの暴言です。でも、ニッポンではこれを読んで「よく言った」という人が多いのです。とにかくエライ人が今まで後ろめたく感じていた農村エゴイズムを「正当化」してくれたと安心し、これこそ正義であると信じてエゴをごり押しをする。社会に与える悪影響は甚大です。早くくたばればいい。
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